インプラントの治療順序

インプラントは、通常入院をせずに局所麻酔下で骨に埋入します。顎の骨とインプラントが結合するのを待ち、歯の修復物を固定します。この治癒期間は状況により異なりますが、約6週間~12週間を必要とします。

STEP 1 診査・診断と治療方法の計画

患者さんの口腔内の状況を診断し、手術計画を立てます。患者さんに細かい情報を伝え、要望に添ってアドバイスを行い、抱いている疑問に対し、明確にいたします。そして、レントゲン、CTを撮り、手術計画を作成し、デンタルインプラントの埋入位置を決めます。

STEP 2 インプラント埋入手術前の処置

  • 残存虫歯の治療
  • 歯周病の治療
  • 場合によってはインプラントを埋入する顎骨の骨造成術(GBR)など
    (インプラント埋入と同時に行うこともある)

STEP 3 手術(埋入)

局所麻酔を行い、インプラントを埋入します。その後、インプラント表面と周りの骨が結合し、固定するための治癒期間を待ちます。

STEP 4 粘膜貫通手術(2次手術)

インプラント埋入手術でインプラントを完全に埋め込み歯肉を縫合した場合は4~6カ月後に再び粘膜を開き、歯の土台となる装置をつける手術をします。

STEP 5 修復物の装着

治癒期間を経て、新しい歯冠をインプラントに固定します。

STEP 6 メインテナンス

インプラントを長持ちさせるためには

  1. 毎日の念入りな歯みがき
    最も重要なホームケアが歯みがきです。「食べたらすぐに磨く」を心がけ、指導された正しいブラッシングを行いましょう。
  2. 歯科医院での定期管理
    当たり前のことですが、インプラントには神経がありません。ですから感染が起こっても自覚がありません。グラグラ動いてきたり、膿が出て初めて気がつくのですが、こうなってからでは手遅れです。治療終了後は必ず定期的に検診を受けましょう。検診ではインプラントの状態、歯肉の状態、かみ合わせのバランスのチェックなどと歯科衛生士による歯のお手入れを行います。

インプラントの治療過程について

実際の症例で治療の順序をお示しします。

STEP 1 診査・診断と治療方法の計画

初診時の口腔内とX線です。こういう患者さんは(歯がなくなっているところがたくさんあり、残っている歯にも虫歯や歯周病の問題があり全体的な治療が必要です)インプラント治療だけでなく、残っている歯に色々な治療をしなければならないので正確な診査・診断から治療計画を作成します。

お口の中の種々の状態について検査(資料採得)します。咬み合わせの状態、歯周病の状態、虫歯の状態などを詳しく診査、診断します。

  • 口腔内写真
  • X線写真
  • 歯周病検査
  • う蝕検査
  • 咬み合わせの検査
    (フェイスボートランスファー、咬合採得)
  • スタディモデル(模形)

初診時口腔内写真
初診時口腔内写真

オルソパントモグラム 全顎デンタル撮影

スタディモデル
スタディモデル

歯周組織検査
歯周組織検査

その後フェイスボーによって咬合器に付着したスタディモデル(模形)において、治療計画に基づき最終的に入れる歯 (インプラントと残っている歯で治すもの)については、ワックスで形を作る診断用ワクシングを行い、インプラントを埋入するのに理想的な位置を確認します。

フェイスボーによって咬合器に付着した模型
フェイスボーによって咬合器に付着した模型

診断用ワクシング
診断用ワクシング

STEP 2 インプラント埋入手術前の処置

インプラントを埋入する前に歯周病の治療や残っている歯の虫歯の治療を行います

インプラントの治療をしようとする患者様は長い間その部分に歯がなくてもそのままにしていたという人もけっこう大勢いらっしゃるのです。そういう方々は周りの歯が動いてしまって(上の奥歯が下に落ちてきたり、隣の歯が前の方に倒れたり)いることが多いです。

また、残っている歯に虫歯や歯周病があることもしばしばあります。虫歯や歯周病はインプラントを入れる前に治療をしておかなければなりません。特に歯周病は口の中の細菌が歯の周りのポケット(歯周ポケット)に入り込んで起こる病気ですので、歯周病をそのままにしてインプラントを埋入すると歯周病菌がインプラントの周りにも付いてインプラント自体も歯周病にかかってしまうこともあります。また、歯が移動してしまったところは、インプラントを埋入する前に矯正治療や冠を入れるなどして、インプラントを入れてもよく噛めるようにしておくことが重要です。

虫歯の治療
虫歯の治療

欠損を長く放置していたので、下の歯が上にせり上がって、かつ手前に倒れてしまいました。

インプラントを入れる前に歯の位置を改善しておかないと良い位置にインプラントが入りません。

歯周病にかかっており、下の歯がないために上の歯が落ちてしまいました。レントゲンを見ても歯周病により歯の周りの骨がかなりなくなっています。

歯周病の治療をして、歯周病が改善してから、インプラントを埋入し、インプラントの上に冠が入りました。


歯周病にかかっており、下の歯がないために上の歯が落ちてしまいました。
レントゲンを見ても歯周病により歯の周りの骨がかなりなくなっています。


歯周病の治療をして、歯周病が改善してから、インプラントを埋入し、
インプラントの上に冠が入りました。

STEP 3 インプラント埋入手術

CTによる診査・診断

インプラント埋入手術前には診断用ワクシングをもとに、X線やCTを撮影するためにプラスチックでガイドステントを作製し、装着した状態でCTを撮影します。

左上欠損部の診査

X線(CT画像)やスタディモデルでの診査によって、インプラントを埋入する位置の骨の状態を確認します。

CTスキャン(Computed Tomography)による画像診断により、普通のレントゲンでは見られない骨の形や骨の質を診査することができます。
また、3D(三次元立体画像)により術前に骨の形態を立体的にイメージできるようになりました。

左右下顎奥歯部分の診査

埋入手術

インプラントの埋入手術は当院の場合、個室の処置室(手術室)で行います。通常のインプラント埋入手術はそれほど大きな手術ではないのですが、インプラントの手術は病気になった悪いところを切除するというような手術ではなく、人体とは異なったものを顎の骨の中に埋め込むわけですから、手術後に感染(化膿)が起こってしまうことは極力避けなければなりません。

そのために当院では通常の小手術に比べより厳密な滅菌体制で手術を行います。

手術器具は確実に滅菌された(オートクレーブまたはガス滅菌器にて)物を使用しますし、私たち術者は手術衣、ディスポーザブルの滅菌グローブを着用して手術を行います。

通常の手術は局所麻酔の下で行いますが、極度に不安の強い方や少し複雑で時間のかかる手術の場合には患者様のご希望により静脈内鎮静法という方法で不安を取り除き、手術を受けていただくことも可能です。

具体的な手術の術式は図のようなものです。手術は1本~3本程度埋入するのには1時間程度で終わりますが、手術前の消毒や手術後のレントゲン検査などを入れると2~3時間の予定をしていただいた方がよろしいでしょう。

インプラント手術の後は、インプラントと骨がくっつくまで約6週~24週待ちます。その後、インプラントの上に冠をセットすることになります。

STEP 4 粘膜貫通手術(2回法における2次手術)

インプラントを骨の中に埋入(植立)する一次手術の時に条件の良い骨の場合は基本的にインプラントは歯肉の上に頭を出した状態で手術をすることができます。この方法をとれば手術はこの埋入手術一回ですむので通常、一回法のインプラントと呼んでいます。

1回法インプラント
1回法インプラント

しかし、インプラントの種類や骨の状態が悪い(骨が脆弱だったり、骨の欠損があり骨移植などをしなくてはならないなど)場合は、骨の中にインプラントを完全に埋め込み歯肉を縫合する方法をとります。この場合、4~6ヵ月後に再び粘膜を開き、歯の土台となる装置をつける手術が必要になります。この手術のことを通常、二次手術(粘膜貫通手術)とよんでいます。また、インプラント周囲の歯肉の幅や厚みがない場合は、歯肉の移植などをこの手術と同時に行う場合もあります。

2回法インプラントの二次手術
2回法インプラントの二次手術

STEP 5 修複物(ブリッジ)の装着

インプラントが骨としっかり結合した後に一定期間仮歯(プロビジョナル・レストレーション)をつけて、咬み合わせの状態などをチェックします。

インプラントの上にも最終的なブリッジを入れ、他の歯も治療が終了しました。これからはメインテナンス(定期管理)を行います。

STEP 6 メインテナンス

治療終了後は3か月に一回メインテナンスを受けていただきます。メインテナンスは定期検診よりもっと積極的な処置を行います。インプラントや残っている歯が長く持つように以下のような処置を行います。

  • 歯周病のチェックと歯石除去
  • ブラッシング指導
  • PMTC(専門的な歯の清掃)
  • 咬み合わせチェック


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